経営コンサルタント 西塚宏
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経営コンサルタント 西塚宏が語る、企業の経営に大きく関わる売上・利益・経営戦略などの経営アドバイスです。

経営戦略と策定のプロセス(戦略の策定・実施とその転換)

5、戦略の策定・実施とその転換

 企業は同じ業界のライバル会社との競争の中で、自社の地位(成長率・相対的シェア)を高めるためにあらゆる努力をしている、時には大胆な戦略を練り、他社の機先を制したり、社員を大きな目標に向けて奮い立たせるべく叱咤激励をする。適切な戦略を早く実行できるか、他社に先んじてじり貧になるか、あるいは方向性を誤って危機に瀕するかは、まさに経営戦略の問題なのである。

事例
化学会社のJIT(ジャストインタイム)の構築

 S社は本来化学肥料が発祥で事業転換に成功した企業である。塩ビ、半導体ウェハで世界首位、珪素樹脂も大手。収益力に定評がある。

 その内、S社の電子材料事業(マグネット)を取り上げてみたい。1988年頃同事業部は多くの問題を抱えていた。品質不良による顧客クレーム、工程内不良、慢性的納期遅れ、赤字体質、営業は製造を信用しない、製造は営業を信用しない、相互不信。S社は後発メーカーであるが、先発にT社、M社があった。

この両社との戦いで品質、納期、コストの全ての面で劣勢に立たされていた。以下に工程の概略を示す。

インゴット製造→粉砕→冷却→成型→焼結→検査→接着→切断→洗浄→表面処理→組立→洗浄→配送

全てオーダーメードで汎用品はない。多品種、小ロット、短納期である。上記の工程は、全て独立の作業所あるいは工場で製造されている。

 トヨタ自動車の場合、プレス工程→溶接工程→塗装工程→第一艤装ライン→第二艤装ライン→検査工程→洗浄工程→ラインオフ→搬送 第一艤装ライン及び第二艤装ライン(組立工程)と内作、外注との間がかんばんで連結されている。

第一次改善
(1)工程の実態調査 (2)現状の否定 (3)工程の目的追求(4)切り口の決定 (5)流れの構想発想 (6)新レイアウト案作成 (7)旗展開 (8)トライ兼実施 (9)物流改善

 工場レイアウトの改善案は成功しない。継ぎ足し、継ぎ足した建屋のレイアウトの悪さは、経営者が一番よく知っているからだ。

 日本の高度成長を反映する記念碑みたいな工場レイアウトを見て、「お宅は工場レイアウトが悪いですね」、「工場レイアウトをこのように改善してはどうですか」といくら提案しても無駄である。改善コストとメリットのバランスがとれないからである。大切なことは、ムダの多い工程や、儲からない(赤字)工程のみを対象に、工程改善をするのである。

インゴット製造工程の改善:仕掛品が10日間ある。炉が1個しかないため、作り貯めるのである。交渉して炉を3個にした。この改善で仕掛品が1日分となった。

粉砕工程:粉砕機は10台であったが、インゴトとのラインバランスをとるため、さらに10台増設した。

冷却工程:養生という自然冷却であった。ここに業務用冷凍機を導入し、3日間かかっていた冷却を2時間に短縮した。

成型工程:ネックは、へちまのような金型の段取り改善に平均8時間も要するのである。成型機に手を入れ、ボルトの取外し、取り付けに作業者が立ち姿で行う重労働である。これを上下の金型をスライドにし、ボルトをゼロにし、最後の取り付けはオートクランプにした。段取り時間は、5分に短縮した。金型置き場と成型機とは、自動搬送にした。

焼結工程:成型と焼結工程の段差をなくし、自動搬送にした。焼結は、ワークを入れる器を植木鉢を平にしたものを開発し、小ロットで流せるようにした。焼結時間の短縮を図り8時間を2時間で完了するように条件の見直しと設備の改善をした。

検査工程:人力であったが、特性検査なので、自動検査機を導入した。検査時間10時間(ロット)を1個流しにして、1時間に短縮した。

接着工程:この工程そのものをなくした。接着をせず、ワークを並べワンタッチで押さえる冶具を開発した。10時間を1時間に短縮した。切断、洗浄を一工程にできるように、洗浄機メーカーの協力により実現した。20時間を1時間に短縮した。

表面処理工程は、メッキと塗装があったが、営業の協力を得て顧客の了解をとり、メッキのみとした。メッキの冶具かけ、はずしは人手であったが、ロボットに置き換えた。10時間を1時間に短縮した。

組立工程:のネックは人力による磁粉取りである。トンネル状の磁粉取り機を自社で開発した。6時間を1個流しにより、1分に短縮した。これにより、洗浄工程を排除した。

 なお、各工程の入り口と出口にストアを置き、専用搬送車により工程間のワークを最初の1年間は1日1回の引き取り、送り込みを実施、2年目は1日2回、3年目は4回とした。

1年目のリードタイム13日、2年目6日、3年目は3日である。なおこれはトヨタ自動車のリードタイムと同じである。ここまで改善の成果を上げた。


第2次改革 作業改善

①コンベアをとる:コロコンをとる(二つのラインがあった)。
(1)「万里の長城」になるため、両ラインが別ラインになってしまう。見えない壁ができてくる。
(2)別ラインになってくると、同じ班長の指揮下でも、助け合いがなくなってしまう。
(3)コロコンが仕掛品の置場になり、一個流し生産が困難になる。
(4)直線になるので、加工後のもどりが空手運搬になる。
(5)入り口と出口の担当者が別人になるので、不良ゼロのラインづくりが困難になる。

そこで、次の工程別ムダとりを実施する。
(1)手待ちのムダ、取りおきのムダ
(2)ワークの取付けをオートクランプ化
(3)冶具の改善
(4)自動送りの取付け、一個流しの徹底
以上のような改善を実施し、2名を→1名にする。少人化経営が可能になる。

②顔と顔を合わせない。
作業改善を実施する時、従来の発想が出やすくなることがある。ある物体を囲んでレイアウトする発想である。例えば中華料理の回転式円卓がそれである。確かに外見的には顔と顔を合わせているので和気あいあいであるが、仲のよいパート同士だと、手は動かずに口だけが動いて井戸端会議の延長になってしまう。

 S社には磁石の組立ラインがあった。コンベアーによる9工程4名ライン、切り替えが1日4回あり、切り替えロスが全稼動時間の20%あった。経営上、在庫、仕掛品を減少させるため、小ロット生産に改善する。

 このような場合の作業改善であるが、顔と顔を見合すようなレイアウトはよくない。ある物体を囲むと、どうしても外周りになるから、助け合いができにくい。責任者は入り口と出口を担当し、パートの方は内側で、中間作業を担当させる。万一、パートの方が仕事に追われたり、トラブルが発生したら、責任者はすぐ助けに行けるようなレイアウトがよい。


③作業改善の切り口:工場改善研修の実施
(1)工程別ムダとり
 小改善から入り、日常業務のなかに小改善活動を定着化させる。中小企業はこの小改善業務を日常化していないので習慣をつける意味からも特に重要である。

(2)手待ちのムダを切る作業者の動作を見て判断する。機械閑視、ラインアンバランス、前工程の手直しなど手待ちの原因はいくらでもある。原因の除去を考える。

(3)在庫や仕掛のムダで切る
 在庫や仕掛のムダをとるもっとも簡単な方法は、小ロット生産である。この小ロット生産で切り込むと現場の抵抗はすごい。段替えロス時間が小ロット化率だけ入りこむからである。ひいては毎日の生産量が達成できなくなる。

(4)少人化で切り込む
 例えば、2人組立Uラインという結論を先に出して、それに合わせよと全工場に号令をかける。各工場の改善実施率は2人組立の実行率でみる。というように少人化ラインという結論を先に出し強行するやり方である。次にセル生産に移行する。

(5)段取り改善から切り込む
多品種小ロット生産は、段取り回数が増加する。シングル段取りの手法を教えて、全工場、1年間で達成する。

(6)不良、クレームから切り込む
不良ゼロのラインづくりから入るのである。まず、Uラインの形を先につくり、形ができたところで、トラブル発生箇所を退治していく。例えば、トラブル発生ごとに5WHYを実施、工程ごとにポカよけを設置していく。

(7)欠品防止から切り込む
組立工程では、欠品があってはならない。これが第一原則である。ところが、現実はこの欠品で泣かされている。
①連続品は「かんばん」にする
②引当品「チクラーシステム」に入れる

(8)チョコ停防止から切る
装置工場、自動機械工場では1分以内のチョコ停防止から入るほうがよい。チョコ停の前後には必ずといってよいほど、不良品が混入し、市場に出てクレームになるからである。
①ゴミとり、ゴミ防止
②瞬間保全(3分以内に部品取替え、元に戻す)
③予防保全カレンダーなどの対策

(9)一個造り生産方式から入る
全工程を一個造りにしてしまう。例えば、2個同時加工機も1個造りの生産単位になっていれば、一個造りにしてしまう。ちょっと困るのは乾燥機のようにロット生産の方が省エネ上有利なときである。しかし、不良ゼロ生産のためには致し方がないから、時間をかけて一個造りの連続乾燥機に改良していく。

(10)短納期で切っていく
納期を短くする方法としては、作業改善がもっとも効果があがる。例えば、営業を有利に展開させるため、工程を連結していく。工程を連結すればするほど、納期は短くなり、その短縮率は工程連結数(N)の逆数になる。例えば5工程連結すれば五分の一短納期になるのである。


第3次改革
(1)JITと自働化の二本柱の構築
(2)品質保証・原価管理のシステム(VE/VA)
(3)改善と標準化のシステム



■淘汰、合併、業界再編、合従連携、業務提携、M&A少子、高齢化、市場縮小で競争激化の時代
(1)自動車は、トヨタ、ゼネラル・モーターズ、フォードあいグループの3強。
(2)自動車部品は、デンソー、アイシン精機、豊田自動織機 トヨタ系御三家の3強。
(3)タイヤは、ブリジストンの1強。
(4)二輪車は、ホンダ、ヤマハ発動機の2強。
(5)工作機械は、ジェイテクト:自動車向け専用機、アマダ:板金プレス、東芝機械:射出成型機に棲み分け。
(6)産業用ロボットは、ファナック、安川電機の2強。
(7)造船重機は、三菱重工業の1強。
(8)プラントは、日揮、千代田化工建設の2強。
(9)建設機械はコマツ、キャタピラー(米国)の2強。
(10)AV/ディジタル家電・薄型テレビは、しばらく乱戦が続く。
(11)ディジタルカメラはキャノン、ソニーの2強。
(12)複写機はキャノン、リコーの2強。
(13)パソコンは再編。
(14)半導体は、インテル、サムスンが2強。
(15)広告は、電通、博報堂が2強。
(16)鉄鋼は、アルセロール・ミタル、新日本製鉄の2強。
(17)紙・パルプは、王子製紙、日本製紙の2強。
(18)医薬品は、武田薬品工業、第一三共、アステラス製薬の3強。
(19)菓子業界はロッテ、明治製菓の2強。
(20)日清食品、東洋水産の2強。
(21)総合食品メーカーは、味の素の1強。
(22)ビールは、キリン、アサヒ、サントリーの3強。
(23)清涼飲料は、コカ・コーラ、サントリーの2強。
(24)コンビニは、セブン・イレブン、ローソン、ファミリーマートの3強。
(25)スーパーは、セブン&アイ・ホールディングス、イオンの2強。
(26)ホームセンターは、DCM Japan,カインズ~以下7位まで残っているが乱戦は続く。
(27)高島屋、ミレニアムリティリングの2強、以下10位は予断できない。
(28)家電量販店はヤマダ電機、エディオン他~10位までは、乱戦が続く。
(29)ドラッグストアは、マツモトキヨシ、イオン・ウェルシア・ストアーズ
(30)アパレルは、総合アパレルワールド、レディースアパレルサンエー・インターナショナル、紳士服青山商事、ファーストリティリング、しまむら、グンゼ、アシックス
(31)外食 日本マクドナルド、吉野家、レックスホールディングス、すかいらーく、モンテローザ、プレナス、スターバックス
(32)卸 三菱商事、伊藤忠が2強。
(33)生存できるのは、三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅、豊田通商、双日、兼松まで。
(34)電子商取引は、ヤフー楽天の2強。
(35)陸運は、ヤマトホールディングス、日本通運、佐川急便グループの3強。
(36)海運は、日本郵船。川崎汽船、商船三井の3強。
(37)空運は、ANAとJALの2強。
(38)建設は、鹿島、大成、清水、大林、竹中の5強。
(39)金融は、三菱UFJ,みずほ、三井住友
(40)介護サービスは、ニチイ学館、コムスン2強。


■ 戦略論
 企業経営において戦略という言葉が使われ始めたのは1960代からである。米国の多くの企業が多角化するにつれて、どのような製品・サービスを市場に投入するべきかという意思決定をめぐって戦略が論じられるようになった。

その多角化した企業を管理するために、新たな経営組織の形態として事業部制などが広く普及するようになったのである。70年代以降は、経営コンサルタントや米国のMBAコースが多角化した企業の経営戦略を策定する手法などを開発していった。その後市場競争が熾烈となり、激化していく中で、経営戦略の重要性が増大している。

 しかし、戦略が語られるようになるにつれ、戦略という言葉が乱用されるようになり、本来の定義が希薄になりつつある。

 本稿では、戦略の本質に立ち返り、「真に企業を動かしている経営戦略とは何か」を論じることにする。経営戦略を企業活動の中で活用していくプロセスを理解すれば、同業他社との差を拡大し、勝ち抜く企業に変革するはずである。

参考文献
 常勝企業の経営戦略 西塚 宏 玉川大学出版部
 工場経営のためのチェックリスト 西塚宏 日刊工業新聞社
 経営戦略 大滝精一・金井一頼・山田英夫・岩田 智 有斐閣アルマ
 経営戦略 監修 奥村昭博 社会保険研究所
 経営工学ハンドブック 日本経営工学会 丸善
 戦略とは何か コーネリス・A・デ・クルイヴァー ジョン・A・ピアース二世 東洋経済新報社
 MBAマネジメント・ブック グロービス・マネジメント・インスティテュート ダイアモンド社
 MBA人材マネジメント グロービス・マネジメント・インスティテュート ダイアモンド社
 MBAマーケティング グロービス・マネジメント・インスティテュート ダイアモンド社
 MBA経営戦略 グロービス・マネジメント・インスティテュート ダイアモンド社
 MBAビジネスプラン グロービス・マネジメント・インスティテュート ダイアモンド社
 最新・戦略経営 H・I・アンゾフ 産能大学出版部
 経営者の条件 P・F・ドラッカー ダイアモンド社
 現代の経営 P・F・ドラッカー ダイアモンド社
 企業とは何か P・F・ドラッカー ダイアモンド社
 MBA ジョエル・クルツマン・グレン・リフキン・ビクトリア・グリフィス 日本経済新聞社
 MBA 経営戦略 佐久間賢 西籐 輝・大山卓良・大山美和・中野豊・木谷宏 中央経済社
 日経業界地図 2008 日本経済出版社
 業界地図 2008年版 会社四季報 東洋経済新報社
 事例中小企業M&A白書 中小企業経営研究会
 わかりやすい経営計画の作り方 堀川雅史 日経BP社
 競争優位の戦略 マイケルポーター ダイアモンド社
 企業戦略論 H・I・アンゾフ 産業能率大学
 組織は戦略に従う チャンドラー ダイアモンド社

以下のセミナーを実施します。
1.常勝企業の経営戦略合宿セミナー 
   10月3日~7日 東京 プラザエフ 
2.経営計画、利益計画の立て方
   11月18日~19日 東京 プラザエフ

主催:
関西経営管理協会 
TEL:06-6312-0691 FAX:06-6312-0691
日本経営開発協会 
TEL:03-3249-0666 FAX:03-3249-0747

@住宅不況・失業・物価高の三重苦が米国民を直撃している。米国では、サブプライムショック以降、生活の質が大幅に悪化したと、週刊東洋経済8/9は伝えている。サブプライムは序章にすぎなかったのだ。

 中国は、昨年後半からGDP成長率は減速に転じた。輸出の鈍化、インフレ、株価下落で問題は山積みなのだ。日本でも不動産恐慌が始まった。

 ゼファーの破綻は、始まりの始まりだが、都内高級マンションの業者在庫一掃セールが始まる。
 ドルの信認も正念場を迎えた。この脅威を成長の機会と置き換え、自社の強みの発揮の場とするのが、経営戦略である。

 共に皆さんと合宿で考えたい。

|2008,08,07 05:29 PM | ワンポイントアドバイス | comments (0) | trackback (0) |

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